Block Rockin’ Codes

back with another one of those block rockin' codes

#HTTP2Study の軌跡

Intro

この記事は HTTP2 アドベントカレンダー 24 日目 の記事です。

HTTP2Study

HTTP2 Study は、2013年8月くらいから小さく小さく活動しているコミュニティです。

HTTP2 もまだ HTTP2.0 と呼ばれていた頃で、 Draft でいうと 04 くらいですね(今は 16)。

(ちなみに、現在の仕様では "HTTP2.0" ではなく "HTTP/2" もしくは "HTTP2" が正しい名称です。)

仕様を策定してる HTTPbis としての議論は概ね片付いて、 HTTP2 の仕様は RFC にするための次のステップに移り、もし仕様を覆すような大きな指摘が無ければ、来年の頭にはこのまま RFC として公開されるかもしれないというところまで来ました。

そして今日はこの仕様策定をずっと追いかけてきた HTTP2Study がやってきたことを、簡単にまとめてみます。

きっかけ

この業界であれば HTTP/1.1 を普通にみんな使ってるわけですね。 そして keep-alive や pipelining といった仕様に対して、意見というか文句がある人は結構いて、思うに任せて呟いたりしていた人もよく見ていました。

まあ、 RFC 2000 番台で公開された仕様で、リアルワールドでがっつりデプロイされている仕様なので、そう簡単には変えられません。仕方ないのはわかります。

そして最近になって、その隣で WebSocket のような仕様が策定される様を自分は見ていました。仕様は結構ドラスティックに変わって、結果 RFC として公開されました。 でもやっぱり、仕様に文句言う人が結構沢山いるんですよね。まあわかります。フレームが複雑な気は確かにします。でもそれは意味があって議論した結果できたことで。。

というか、ついこの間まで仕様策定してたんだから、意見があるなら策定中に言えば反映されたかもなぁ、と薄々思っていました。


SPDY が出た時も文句がある人が結構いました。 HTTPS 前提とかバイナリフレームとか色々気に食わなかったんでしょう。でもこれは一企業の独自プロトコルなのでまあしょうがない。


でも、これが HTTP の次の仕様として策定されるドラフトの土台になって、標準化が始まりました。

この大きな変化の中で、仕様の策定段階から仕様を読んだり、実装を進めたり、集まって自分たちなりに議論したりすれば、この仕様策定に少しは「関与」することがもっとできるのではないか?

RFC 出てから文句を言うのではなく、議論の段階でそこに参加することで、今まで結果に対して受け身でしか無かった「標準仕様」というものに対して、もう少し積極的に関われるんじゃないかと思い、そういう場所を作ってみようという思いがありました。

単に参加者の前でスライドを読んで終わる発表会や、 LT 大会よりも、実装とか議論を意識的に重視してきたのはその意味もあります。





嘘です、 Web が変わって行く様が見たかっただけです。

実装

HTTP2 を実装するのが一つの目的なので、主要な人はだいたい実装を持っています。

主な実装は以下の Wiki にまとめられているんですが、この中で 5 つ、ここに載ってないものでも 2,3 個が日本から出ています。

http2 implementation

言語で言うと、 C, Go, Node.js, Ruby, Haskell etc と言う感じで多岐に渡っています。

中でも @tatsuhiro_t さんが実装する nghttp2 は、世界で最も素早く仕様に追随し、ほぼ全ての機能を実装して、あらゆるところで使われている神実装です。功績は書ききれない。

httpbis のチェアである Mark Nottingham にも 「nghttp2 は参照実装(reference implementation) だ」とお墨付きをもらっています。

こんな凄い開発者が日本人だったから HTTP2Study はできたという面は、正直かなりでかいです。

勉強会

小さく小さくやってきました。ただかなり濃かったと思います。

日々仕様は変わって行くので、まずは仕様策定が進む大事な会議である IETF の会議に参加したメンバーに、その参加報告をしてもらっています。主に @mad_p さんや @jovi0608 さんにやって頂きました。

海外渡航とか長期滞在はそう簡単にはできませんので、この報告は非常に助かってます。 (今年は、自分も IETF89 に参加する機会 があったのでやらせていただきました。)

各自が実装してみた知見の共有も結構やりました、ただ発表会じゃなくてそこから議論が始まるくらいには近い距離感を意識したので、時間内に終わったことはあまりないし、それができるように発表は少なくしてきたのも良かったと思います。

他にも、 HTTP2 の性質上色々なレイヤに話が及ぶので、そうした話に詳しい方もお呼びして話して頂きました。

たとえば Canon の藤沢さんに HPACK の原型になった EXI圧縮 の話をお願いしたり、 @hirano_y_aa さんに、議論中の WebSocket over HTTP2 の話をお願いしたり、 @kaname さんに、ネットワークインフラ(プロバイダ寄り)からみた HTTP2 のお話をお願いしたり。

ここでしか聞けな話は多かったと思います。

hack-a-thon

実装者も多いのでハッカソンも何回かやりました。

このタイミングで、後述するテストケースが生まれたりもしましたね。 これらは、 HTTP2 を実装する上であるとうれしいものだし、 HTTPbis の ML では同じようなものをやるやる詐欺してる人も多かったけど、実際にちゃんと作りました。後者は @kazu_yamamoto さんが作ってくれたものをもとに今作業中です。

成果物も多くなったので、 http://http2.info/ を作ってまとめる作業もやりました。(ロゴも含めて @summerwind さんがデザインしてくれました)

また、初心者も実装に参加できるように、膨らんだ HTTP2 の仕様を削りに削って最小の Hello World を実装できるようにするハンズオン。 「HTTP2 最速実装」シリーズも作りました。これはやるたびに仕様が変わるので、持ち回りで最新の仕様にアップデートしたもんをやっています。 (v0 は wiki に俺が書いたのがはじまりなんだけど、さすがに古いのでこれはアップデートしないとだ。。)

そして、毎回会場を貸していただいてる @y_iwanaga_ さんには本当に感謝です。いつも色々手配して頂いて本当にありがとうございます!

issue-thon

HTTP2 の仕様は github で管理されているので、そこにあがっている issue を読んできて、みんなで議論するという回をためしにやってみました。

目標としては、 issue を眺めるだけじゃなくて、それを理解して議論してコメントを書くことで、議論に参加しようというもの。

といっても理解するだけでも結構大変なので、俺はコメントするようなところまで行けませんでしたが、かなり高度な議論になり、会自体はすごく勉強になりました。

これも少人数だったのがよかったのかも。

またやりたいと思うのですが、 HTTP2 の issue は基本片付いた(だから RFC に向けて進んでる)ので、まあ直近は無いかもれませんが、似たような構成を別の形でやりたいですね。

(ちなみに、 @mad_p さんが今年の IETF でコミュニティの話を発表したときは、海外勢には issue-thon が一番食いつきよかったようです。)

HTTP2 Conference

色々なタイミングが重なったので、今年は HTTP2 のカンファレンス を開催しました。 まあ世界初のカンファレンスというと聞こえがいいですが、単純に RFC も出てない仕様のカンファレンスという意味では気が早かっただけですかねw

ゲストとして、 High Performance Browser Networking の著者でもある Ilya Grigorik に来日してもらって、キーノートをお願いしました。

そして、この少し前に h2o を実装した @kazuho さんも交えて、トークセッションをやらせてもらいました。

全体的に濃くて良いカンファレンスになったと思います。

ドラフトに ACK が載った

そんなこんなで色々やっている間に、ドラフトにこのコミュニティがやってきた活動に対して謝辞が載りました。

http://tools.ietf.org/html/draft-ietf-httpbis-http2-16

The Japanese HTTP/2 community provided an invaluable contribution,
including a number of implementations, plus numerous technical and
editorial contributions.

日本の HTTTP/2 コミュニティは、多くの実装に加え、
様々な技術的および編集上の修正など、多大な貢献をしてくれました

http://http2.github.io/ のページのトップにも、 HTTP/2 JP のページへのリンクがいつの間にか載っていました。

多分世界的に見ても、ここまで盛り上がっている地域コミュニティは多分まだないので、「どこぞの島国にクレイジーな奴らがいる」くらいの印象なんだろうとは思いますが、まあこうして認知してもらえる程度には貢献できたのかなと思います。

今後

直近では、ハッカソン を年明けにやります。 これは Interop といって、それぞれが実装を持ち寄って相互接続試験をやるという内容です。

今回は最速実装のような初心者向けコンテンツも用意しない(interop に集中するため)ので、初心者向けではありません。

あとは、とりあえず RFC が出るのを楽しみにするフェーズですね。出たらちょっとしたお祝いでもやれたらなと思っています。 HTTP2 も RFC になる前に大どんでん返しがあって、振り出しに戻る可能性だってありますが。

他は、正直まだ考えていません。来年の今頃は #quicstudy になってるかもw

ふりかえって

コミュニティとしての成果だけでなく、そこにいる人々の個別の成果も含めれば、ここに書いたのはほんの一部です。 そして実際、自分個人としてはまあ大したことはしてません。日程を決めて場所を取ってコンパスに登録したくらいです。

ただ、幸運にも凄い人たちが集まって、そこから得られるものは凄く多かったし、なによりもこうやって、議論や実装を重視する場ができたのが自分としては良かったなと思います。

そうした人たちに色々教えてもらったおかげで、自分の実装もかろうじて動くくらいまではきました。

本当にこのコミュニティは勉強になります。凄い場所だなといつも思います。

今後どうなるかはわかりませんが、とりあえず次の interop に向けて各自冬休みがんばりましょう!!

HTTP2 のカンファレンスを開催します。 #http2conf

11/3 に HTTP2 のカンファレンスを開催します。

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HTTP2Conference

HTTP2Conference

2012年8月に、 SPDY/3 の仕様をベースとしてスタートした HTTP2.0 は、その正式名称を HTTP2 と変えながら議論を重ね、 執筆時点で Draft-14 まで仕様の策定が進みました。

現在は、この Draft をベースに Chrome, FireFox, IE といった主要ブラウザベンダや、 Google, Facebook, Twitter といったパイパージャイアントと呼ばれる大規模サービス、 そして、その他仕様に関心のある世界中のエンジニア達によって実装され、検証され、フィードバックされています。

HTTP2 を策定するワーキンググループである IETF の HTTPbis では、 ML を介して今も活発な議論が行われ、その議論の結果は RFC に向けた次なるステップである WGLC(ワーキンググループ・ラストコール) という形にまとめようというフェーズにあります。

要するに HTTP2 の仕様の大枠は見えており、世界中の Web で実用可能な仕様まで詳細を詰めながら形にしていくという、最も重要な時期であるといえます。

このタイミングで、ここまでの http2 を振り返り今後を考える一つの機会として、把握している限りでは世界初の HTTP2 をテーマとしたカンファレンスを開催することになりました。

HTTP2Conference

スケジュールは以下です。

11:00-12:00受付(受付票を提示下さい)
12:00-12:25オープニング by @jxck
12:30-13:30基調講演 by @igrigorik (英語/通訳無し)
13:30-13:45休憩
13:45-14:45HTTP2 最速実装*1 by @summerwind
14:45-15:00休憩
15:00-15:30h2o by @kazuho
15:30-16:00nghttp2 by @tatsuhiro_t
16:00-16:30QUIC by @jovi0608
16:30-16:45休憩
16:45-17:45トークセッション*2(英語/通訳無し)
by @igrigorik, @kazuho, @tatsuhiro_t, @jovi0608
17:45-18:00クロージング*3

セッションのキーノートでは、 Google の Web Performance エンジニアかつ Developer Advocate であり、High Performance Browser Networking の著者でもある Ilya Grigorik を招待してトークをお願いします。

次に 「HTTP2 最速実装」ですが、これは新しく HTTP2 に興味をもった人が、手を動かすとっかかりとなる題材として http2study のメンバーで持ち回りで行っているハンズオンです。一言で言えば以下のような内容です。

複雑な HTTP2 の仕様の中で、
一番簡単に Hello World レベルまでを実装するための、
最小限の仕様とそれを用いた実装方法の解説

もともと wiki から始まったものですが、これまで 3 回(v1, v2, v3) 実施してきました。

今回は、 HTTP2 仕様の日本語訳 を行っている @ さんが担当として、最新のドラフトでの最速実装をライブコーディングを混ぜながらやっていただく予定です。 HTTP2 をこれから始める方も、仕様の理解を深めるとっかかりとなるコンテンツです。

他には、 - ISUCON 周辺でも話題になった @ さんによる h2o のトーク - 世界を代表する HTTP2 の実装である @ さんによる nghttp2 のトーク - そしてどこよりも早い @ さんによる QUIC のトーク などをお願いしています。

また、トークセッションでは、 Ilya 含めた登壇者達による HTTP2 の現在と今後についてのトークを実施予定です。かなりガチな内容となるでしょう。

HTTP2 (ないしは SPDY や QUIC) に興味がある方々、これから始める方も、すでに HPBN などで知識を得ている方、または実装に着手している方、様々な方々が得るもののあるカンファレンスとなると思うので、是非参加してみてください。

また、これを期に開催の母体となっている #http2study のこれまでの活動を簡単にまとめてみたいと思います。

http2study の活動

日本では元々 SPDY に関心があったメンバーを中心として、2013年8月に最初の勉強会 #http2study を開催しました。

HTTP2 の実装は、ブラウザベンダ以外にも多くの開発者によって行われており、自己申告ではありますが以下の Wiki にまとめられています。 (開発途中も含みますが)

http2 implementation

現時点で 26 の実装が掲載されていますが、 この中には世界的に有名な、事実上のリファレンス実装となっている nghttp2 を含め 5 つの実装が日本から出ています。(ここにないものも 2,3 は確認しています)

そのほとんどの日本人開発者が参加する #http2study では以下のような活動をしてきました。

  • IETF 報告会
  • HTTP2 最速実装ハンズオン
  • hpack-test-case
  • 仕様翻訳(ほぼ @ さんによるもの)
  • 仕様に関する議論/実装で得られた知見の共有

IETF 報告会

IETF で定期的に行われる会議は HTTP2 の仕様がまさしく改訂されて行く現場ですが、海外で実施されるため簡単には行けません。 そこで、参加者に結果を報告会として共有してもらって、みんなで進捗を把握します。

実際には IETF とは別途行われる httpbis の interim というミーティングの内容や、 interop という相互接続テストの結果なども参加者に共有してもらってきました。

(ちなみに、次回 11/9~14 で行われる IETF の報告会は、 11/27 に予定しています。)

HTTP2 最速実装

高度な議論になりがちな勉強会ですが、新しく HTTP2 に興味をもった人たちにとっては敷居が高すぎるため、 http2study では「HTTP2 最速実装」というハンズオンを定期的に行っています。

最速実装とは簡単にいうとこうです。

「複雑な HTTP2 の仕様の中で、一番簡単に Hello World レベルまでを実装するための、最小限の仕様とそれを用いた実装方法の解説」

最初は自分が書いた wiki で始まったのですが、そこから担当を替え、 @ さん、 @ さん、 @ さんが、その時の最新実装でアップデートしながら続けてきました。

これを見ると、ドラフトのどことどこを見れば、一番簡単な実装が完成するのかを把握し、手を動かすための第一歩となるでしょう。

hpack-test-case

HPACK という仕様の実装のために、テストケースがあったらはかどるだろうと始まったのが、 hpack-test-case です。

hpack-test-case

ここでは、各自の実装でエンコードしたデータを登録し、それを他の実装がデコードすることで、 interop (相互接続テスト) を行うためのテストケース群です。 仕様書にあるサンプルだけではカバーしきれないケースもあぶり出し、なにより自分の実装が一定水準を満たしていることが確認できるため非常に有用です。

現在、 HTTP2 のフレームを対象にしたテスケースも同様に作成するために、メンバーで作業中です。また、相互テストの自動化を検討しているメンバーもいます。

仕様翻訳

HTTP2 のドラフトと HTTP2 のリポジトリにある FAQ については @ さんによる日本語訳が公開されています。

素晴らしいことに Draft については Draft-04 から改訂ごとにアップデートされており、最新のものに追従されています。

また、初見で理解するのはなかなか難しい仕様の理解を深めるために、議論も活発に行われています。 実装するなかで得られた知見は、そのまま HTTP2 の仕様に反映されたものもあります。

仕様に関する議論/実装で得られた知見の共有

仕様について深く理解するためのディスカッションもよくおこります。HTTP2 の Github リポジトリ にある issue や ML であがっているトピックを議論するための issue-thon を開催したこともありました。

特に仕様に熟知した @ さんや、標準化に深く関わる @ さんがいるため、仕様についての質問をすることができるのも非常に恵まれた環境です。 @ さんが共有してくれた、実装を用いたベンチマークは、実際に仕様の変更につながる結果となりました。

前に立つ人だけが発信する一方向なイベントスタイルにとどまらず、個々がどんどん発言する結果、結構ガチな議論が行われる、そんなスタイルで #http2study は活動してきました。 拙作ですが、 @tatsuhiro_t さんと @jovi0608 さんには、 #mozaicfm の http2 の回 にも出ていただきました。

ここまでを振り返って

なかなかガチというか、実際自分でも着いて行けてないことが多い、ハイレベルはコミュニティだと思います。 (一方でこの密度の勉強会を維持できたのは結構凄いと思ってます)

このコミュニティの活動はそれなりの結果が出ていると思うし、自分はその一部を今年の 3月に IETF89 で発表 させてもらったりもしました。

その http2study の活動と HTTP2 という仕様自体の、一つのチェックポイントとして、このカンファレンスを通じて HTTP2 への関心と正しい理解が広がればと思います。

Jxck

IETF89 で #http2study の話をしてきました。

Intro

2014/3/2 ~ 3/7 にイギリスのロンドンで実施された IETF89 に参加し、HTTP2 について議論している httpbis というワーキンググループで、日本での HTTP2.0 に関する Local Activity (コミュニティ活動とその成果)について発表してきました。

IETF

IETF は、ネットに関わる「Wire より上、Application より下」のレイヤの標準仕様などを決める標準化団体です。 IETF には、さらに目的に特化した WG(Working Group) に分かれており、最近自分が取り組んでいる HTTP2 はこの IETF の中の httpbis という WG で議論されています。

今回色々な方の助けもあり、幸運が重なって、初めて IETF に参加することができました。

とりあえず旅行記的に書いてみます。

-2日目(出発)

日本での土曜の早朝の便なので自宅からは始発でもキツイ、ということで前日終電で羽田に入り、空港で一晩明かすことにしました。 結構人がいる静かな空港のカフェで、ひたすらスライドとコードを書きます。

飛行機に乗ったら離陸と同時に爆睡。 12 時間のうち 10 時間は寝て、 2 時間は "Kick Ass 2" を見てるうちに到着。 起きた時はイギリスの 8:00 くらいだったので、時差ボケ一切なく英国入りするという狙いは完全に成功しました。

-1日目(入国)

FB には書きましたが、「個人が趣味で IETF に参加する」というシチュエーション自体が怪しまれたのか、税関を通るのに苦労するという罠を何とか突破しホテルへ。

飛行場から Heathrow Connect (8.5ポンド)で行くつもりが、間違えて Express (21ボンド) を買ってしまい宿へ。快適でした(泣。

宿は会場から 2 駅離れた Baker Street 付近。普通のホテル。

近くにはでかい公園とかシャーロック・ホームズミュージアムとかあったけど、ほとんど観光せず。先に現地入りした方と合流。 IETF 大先輩な方々と、トルコ料理を頂きました。

0日目(New Commers Session)

IETF 開始の前日にあたるこの日は、参加受け付けをし、初心者向けのセッションへ。

New Commer は、受付で赤いリボンをもらうことができ、このリボンをつけている限りはみんなが優しく接してくれるそうです。

そして、 New Commers Session に参加。 IETF がどういう団体で、どういうプロセスで標準仕様を決めているのか、などなど細かいところまで教えてもらえます。(資料はまだ上がってないみたい) これ、凄い勉強になったし、噂の hum デビューしました。

(IETF では Rough Consensus を取るときに、挙手させるのではなく hum (ハミング) で大体の賛否を取ります。 要するに「hu~~~~」って感じでハミングして、だれが何に賛同しているかを見た目ではわかりにくくしている。)

その後 Orientation で IETF な方々や他の参加者と交流。意外と日本人が多い、特に大学生が多い。

ここで、今回参加しないと聞いていた WebSocket over HTTP2 の仕様作者さんが急遽参加していたことを知り、一緒に御飯を食べることに。

1日目(httpbis#1)

httpbis の一回目のミーティング。 このミーティングの最初の方が、自分達が話すターン。

今回の httpbis は、 Google の Hasan というピンクを着こなすオシャレガイにより、「スーツに Bowtie」というドレスコードが発行されていました。 実際、全員ではないけど Chair の Mark や Google の Martine, Will Chan などなど数人がスーツで出席。

俺は、 @ と一緒にスーツで登壇。

まず自分が #http2study などで行っている日本の Local Activity や、その成果としての hpack-test-case について話し、最後に @ が 4 月に書く予定の I-D (Infomational Draft) について話しました。

その後は、 Github の issue を Open Mic で話しながらみんなで閉じるという、 IETF の歴史からいうと結構先進的なワークフローで議論が進みました。

注目していた WebSocket over HTTP2 の話はあまり出ず。 hum をする機会はありませんでした。

ひと通り WG が終わったら、最後に全体向けのプレナリセッションがあり、今話題の Bitcoin の話とかあったのですが、その寸前に httpbis 議長の Mark が、地元の勉強会に出るらしいことを聞きつけ、自分だけそっちに行きました。

Mark のセッションは俺にとってはそんなに新しいことはなかったけど、会場からはかなり質の良い質問が沢山でていて、勉強会としては非常に良かったと思います。(電源が無いことは別として)

日本(の Otaku 文化)大好きなナターシャと、カウボーイ・ビバップ図書館戦争の話をしたりしながら、ひと通り飲んで帰宅。

2日目(social)

イギリスに来たら必ずやる「イングリッシュ・ブレックファースト」で朝食。

好きである。ちなみに紅茶派。

この日は特にミッションも無かったので、 WebRTC とか見ていたけど、席も後ろで殆ど見えず、ついていけなかったのでこのブログをひたすら書く内職。

夜は Social Event ということで会場から 30 分の博物館を貸しきってイベント。

もともとは、造船所だったっぽい。イギリスの歴史についての展示がメインでした。

楽しかったけど、腹ペコなのにフードが圧倒的に不足していて、割りと空腹なまま宿に帰って寝る。

3日目(httpbis#2)

httpbis の二日目。

初日同様に github の issue を片付けていく感じ。 メインだったのは Priority Leveling と、 TLSネゴシエーション周り。

終わり際に少し Mark に話をしたけど、「続きは土曜に」ということで断念。 (土曜は London の Mozilla で非公式の httpbis meeting がある。俺は出れない)

その後何人かで、 1日目に日本のアニメ話をした Natasha にパイの美味しいお店に連れてってもらい、たらふく食べる。

夜のロンドンをちょっと観光案内してもらいつつ解散して宿に帰り、この記事を書く。 また、徹夜で電車に乗り空港へ。

4日目(帰国)

朝の 5 時にチェックアウト。

100ポンド持って行った残りが、空港についてスタバで一杯飲んだ時点で 3 ポンド強の使い道を探るなどする。(空港でお土産を買えば、小銭全部+残りはカードみたいなのが出来たらしい。)

安眠確保のために、奮発してプレミアム・エコノミーに上げたけど、「あれだけ追加払ってもこんなものか。。」という程度だった印象。そうこうするうちに着陸。

そのまま空港で IETF での発表時に着た、およそ社員が会社に着ていくとは思えないドレス・スーツに着替えて出社。何事もなかったように日常にジョインしてターンエンド。

感想

やっぱりまだまだ英語力、特にリスニング力が足りないなぁと。

議論の内容が聞き取れないと自分がどんなにその技術や議題を理解していても、参加できないという現実。

以前 US で NodeConf に参加した時も同じことを思って、自分なりに色々訓練したつもりだったけど、まだまだダメでした。

この状況はもっと何とかする必要がありますね。

あと、標準化の世界は自分にとってはかなり未知で、その世界の仕組みについては標準化 Guy である @ さんとか @ さんに色々教えてもらえたのが幸運だった。

みんなミッションを持って来るので、俺のような趣味の延長で来たような人間がウロウロするのはあまり良いことでは無いのかもしれないけど、 @ さんの計らいで、たった 5 分でも日本のアクティビティーを世界に発信するという能動的な参加ができたのは、幸運だったし自分にとってはいい経験だったと思う。

この世界の人々は、「3月で予算が余ったから来たんですよテヘペロ」と口では言っておきながら、「コードを書く」という俺らが得意とする分野のもう一層隣にある、「標準化する」というレイヤから世界を良くしようという、熱意と正義感で貢献している人が集まっていて、とても良い刺激が得られました。

2015年11月には、 IETF が日本の横浜で開催されることが決定しているので、興味のある方は是非参加してみるといいと思います。

終わりに

肝心の HTTP2 の議論と動向については、次回の #http2study で報告します。

今回の旅で知り合うことができた、 WebSocket over HTTP2 のドラフト筆者である @hirano_y_aa さんと、ネットワーク・インフラのエキスパートである @kaname さんにも登壇をお願いしたので、かなり熱い話が聞けると思います。

最後に、ずっとお世話になりっぱなしだった @ さん、 @ さん、 @ さん。本当にありがとうございました。

Jxck